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AI導入方法

このページは、既存のビジネスへAIを導入する方法やAI導入費用の検討の付け方について解説しています。
新規ビジネスへのAIの活用を検討されている場合は、「AIを活用した新ビジネス」の ページを参照してください。

項目

AI導入のメリットがある業務を探す

技術がブームになった際に有りがちな傾向ですが、 AI導入を検討している企業の中には、 「とりあえず、AIを導入したい」と言わんばかりの漠然とした動機を持つ企業も少なくは有りません。
ビジネスとして投資を行うからには、AI導入によって、「売上向上」や「費用の削減」などの目標や事業課題の解決が果たさなければなりません。
目的を明確にすることによって、手探りであったAI導入プロセスに筋道が見えてきます。

AI導入で押さえるポイント1「AIを活用する場を決める」

  • 人がやってきた簡単な業務のAIへの置き換え
  • 人に任せると習熟が必要な業務のAIへの置き換え
  • 人が出来ない高度な業務をAIに任せる。

AI導入で押さえるポイント2「AIで出来ることを把握する」
既存のAIの導入事例から選定すると下記の4つの分類に分かれます。

画像や音声を扱う業務
具体例 会話・自動応答、画像解析、画像生成、データエントリー(印刷物の入力業務)、翻訳
過去のデータ基づいた推論や判断が必要とされる業務
具体例 与信審査、内科診断、異常・不良品検出、人事評価、投資判断、節税の提案
人間では扱いきれない膨大な量のデータの解析とそれに基づく予測
具体例 売上予測、需給予測、故障予知、不正取引の発見、選挙結果の予測、防犯カメラによる監視
条件や経路などが不定形な概念を扱う業務
具体例 文章の要約・作成、派遣スタッフのマッチング、広告最適化、パラリーガル業務全般、経理業務全般

そして、これらに加え、
AI化した業務はコンピューターのメリットを活かせます。
×処理速度の向上 ×24時間稼働

3段階から成るAI導入のプロセス

AI導入プロセス1

AIは結果を出す為の手段でしかありません。
業務を整理し、どこにAIを導入すれば、投資効果が得られるか探します。

AI導入プロセス

自社の事業を整理し、事業のどこに「課題・機会」が存在し、そして、それが、AI導入によって「解決・達成」されるか、
どのようにAIを使えば、競争力を高められるかを見極め、AI化する事業を絞り込みます。

AI導入プロセスの注意点1
AIを導入する業務のピックアップは、必ず、事業部門などのビジネス側の人間が主導権を持って行いましょう。
AI開発者や情報システムの担当者に全て任せてしまうと、 AI化のメリットが高い業務ではなく、 AI化の成功の可能性の高さを尺度として選定してしまう為、AI投資によって受けられる恩恵が低くなります。
情報システム側とビジネス側の価値観の不一致は通常のシステム案件でも起こりますが、 特に、AI導入は歴史が浅い為、成功事例が豊富な守りに入った提案をしがちです。

AI導入プロセス2

AI導入費用が決まる工程です。

用途に応じて、必要になるAIを分類します。
分け方は、ケースによって様々ですが、AI開発のハードルが高い現在の状況下では、 まず、「汎用AIで対応出来るか否か」の尺度で分類することをお勧めします。

汎用AI(学習済みのAIが使える場合)
必要なAIが、汎用AIであった場合、AI導入のハードルが低くなります。
汎用AIとは、良く使われるモデルを備えた学習済みのAIです。機械学習が終了している為、AI開発の手間が省けます。

学習済みのAIは、各社より、インターネット経由で呼び出せるクラウドサービスとして提供される機会が増えています。

クラウドAIサービス
利用できる機能 AI API の提供元
対話ボット(会話) Amazon Lex
人の顔の認識 Microsoft Face API
オブジェクト認識 docomo API tool
需給予測 富士通 zinrai
音声のテキスト変換 Google CLOUD SPEECH API
翻訳(60か国語対応) Translator Text API
ビックデータ解析 IBM Watson
動画分析 Google CLOUD VIDEO INTELLIGENCE

こういったソフトウェアの必要な機能を必要な分だけサービスとして利用するシステム環境を総称して、 SaaS(Software as a Service)と言います。
使用時間や使用料金ごとに、費用が発生する課金制の料金体系を取っており、初期費用の負担も有りません。

例えば、コールセンター業務のAI導入による自動化を考えた場合、「音声認識」「音声解析」のAIが必要になります。
これらの汎用AIと、コールエージェントによる自動応答のシステムや ナレッジデータベースの構築をセットにしたコールセンター自動化一括パッケージは、多くの企業で商品化されています。

自動応答コールセンター

汎用AIで賄える場合は、AI導入費用が安くなる為、中小企業でも気軽にAIを業務に導入できます。
(以下、識別の為に、この学習済みのAIモデルが使えるケースを2Aと呼称します。)

新しくAIを作る必要がある場合(学習済みのAIモデルが使えない場合)
このAIの場合は、さらに2つに分かれます。

ケース2B
機械学習用のデータを集める必要があるが、既知の学習方法で対応できる。
ケース2C
1から機械学習の計画を立てる必要が有る。

2Bの場合は、機械学習に必要なデータを集めることが出来るのであれば、さほど、難しくありません。
問題は2Cの場合です。
この工程に対応できるAI開発者の確保が難しく、開発期間も長くなります。
また、導入後も、AIのチューニングを繰り返しながら、運用する必要があります。
投資の費用対効果や回収期間を踏まえ、覚悟を持って、AI導入にあたる必要が出てきます。

AI導入プロセス3

システム化して実装する。
AIは、ファンクション(機能)のひとつでしかない為、動かす為には、完成したAIをシステムの一部として組み込む必要があります。
これ以降の工程は、従来のシステム導入と同じ手順と捉えて頂いて問題ありません。

一般的なシステム導入の工程

  1. 要求分析
  2. 要件定義
  3. 基本設計
  4. 詳細設計
  5. プログラミング
  6. 単体テスト
  7. 結合テスト
  8. 総合テスト
  9. 運用テスト
  10. 本番稼働(カットオーバー)

ディープラーニングの課題

AIを機械学習させる必要がある場合、2つの課題があります。

AI導入の課題1

「データの確保」
人間の学習の基礎が知識の吸収から成り立っているように、 機械学習をする為には、AIに質の良いデータを適正量与えてやる必要があります。

人間の学習 AIの学習
人間の勉強 AIの勉強

必要なデータ量について
機械学習には、「必ず、膨大な量のデータが必要だ。」といった論調の記事を頻繁に目にします。 ですが、それは、機械学習についての情報が古いが故の誤解です。
用途にもよりますが、良質のデータが含まれているのであれば、量が少なくても、機械学習を始めることが可能です。

機械学習に必要なデータの集め方

社内に蓄積されているデータの活用
日々記録されている業務システムや個々のExcelファイル等の数字データやテキストデータが使えます。
IoTを使って収集する
センサーの計測値やカメラの映像などが該当します。
自社製品全てにIoT機器を付けて販売し、使用履歴や走行データを収集している事例も有ります。

その他のデータ収集方法

  • データを購入する。
  • データを持っている企業と業務提携し共同開発する。
  • データを持っている企業を買収する。

例えば、IBMは2016年に大量の医療データを持つトゥルブンヘルスアナリティクス社を26億ドル(約3000億円)で買収しています。
この買収で得られた2億人分の患者データは、IBMの人工知能「Watson(ワトソン)」に与えられ、機械学習に役立てられています。

AI導入の課題2

「機械学習のチューニング」
そして、AIを賢くするためには、与えるデータの質と量を調整する必要があります。
この工程では、「データの前処理」や「データのノイズの除去」等の作業を行います。

ノイズ除去の簡単な例
目的「小型犬だけをマーキング(抽出)したい」

機械学習の下処理

AIにとって、何がノイズになるかは、目的(導き出したい結果)によって異なります。
また、ノイズを除去しすぎると、例外に対処できない頭の固いAIになってしまいます。
チューニングはさじ加減の難しい工程です。

AI導入の失敗例

AI導入に多い失敗例について回避策を交えながら解説します。

AIを導入したものの、「期待した効果を得られなかった」
失敗理由
要件定義の曖昧さが原因です。
要件定義とは、ビジネス側の要望と目的を導入する側が把握した上でシステム化構想をまとめる工程のことです。
AI案件に限らず、システム導入の失敗原因のトップ1です。

AIを導入した結果、「トラブルが発生した」
失敗理由
実環境を再現し、テストしていないことが原因です。
学習済みAIを有償で利用できるサービスも有りますが、大手が提供するものであっても、実用レベルに達していないAIも少なくありません。
選定は慎重に行いましょう。

完成したAIは、「使い物にならなかった」
失敗理由
最悪なパターンです。
完成まで成果物が予測できなかった点で、プロジェクトに必要な要員が揃っていないことが解ります。
AI導入のプロジェクトの場合、システム要員に加え、データサイエンティスト等の専門のAI開発者が必要です。

AI開発者が持っているスキル
AI開発者  
AI化の実現可能性・適合性についての検証が出来る
AI学習に必要なデータの選定が出来る
AI学習に必要なデータ量の予測が出来る
AI学習に最適なアルゴリズム(方法論)の選択が出来る

例えば、AIで、ある予測を目標として、ビックデータの分析を試みた場合、 まず、その予測が、推論可能なもので有るか否かの考察が必要です。
いくら高度な分析が出来るAIであっても、入力条件と出力結果に再現性が無い偶発性の高い予測は不可能です。
(予測の限界については、「AIを活用したビジネスの作り方」掲載のコラム「何故、AIはロト7の当たる数字の予想は出来ないのか?」でも解説しています。)

この失敗は、導入プロセス1の検証の失敗によって起こっています。

AIを導入したものの「費用倒れ」に終わった。
失敗理由
投資効果の算定が甘いです。
また、実は多いのが、そもそもAIを使う必要が無かった例です。
定型業務なら普通のアプリケーションやRPAで十分です。

AIプロジェクトに携わるメンバーをどのように集めるか

AI導入のプロセスの3つの分類に従い、必要なメンバーを選定します。

メンバー集めの難易度 分類
AI開発要員 ケース2A「汎用AIの利用」
APIとして提供されている学習済みのAIをシステムに組み込むことが出来る。
AI開発要員 ケース2B「オリジナルデータによるAIの機械学習」
方法が確立されている手段を用いて機械学習を行える。
AI開発要員 ケース2C「AIの学習計画からスタート」
最先端の技術の即座に取り込み、AI学習に最適なアルゴリズムすら新たに作り出せる。

システム屋の看板を掲げながら、2Aが出来ない企業や開発者は居ないとは思いますが、 2Aであっても、下記の2つの視点からの検証することは必須です。

  1. AI導入によって目的は果たせるのか?
  2. 利用を検討している学習済みのAIは実用レベルに達しているか?

2Bのレベルの人材は、AIの学習環境の充実により、年々増えている為、集めるのは容易です。
2Cのレベルの人材は、絶対数が少ないです。
国内の場合、AIに特化したベンチャー企業を中心に探すと見つけられる可能性が高いです。

AI導入プロセスの注意点2
AI開発には、Python等のプログラム言語を使用しますが、AIの技術自体は、従来の情報システムの延長にあるものでは有りませんし、 AIの実用化は、ここ2、3年内に始まった新たな動きです。
システムエンジニアの多くは、日ごろから、自発的に勉強する習慣が付いていますが、やはり、AIに関する経験は不足しています。

システム担当者の実績が不十分だと感じられた場合、 企業の業務や経営の中長期目標を熟知しているユーザーサイドの人材にプロジェクトを仕切らせる方が上手くいく可能性が高くなります。