アルゴリズム取引の追跡

まず、株価を作るマーケットの参加者の構成を確認します。

マーケットの参加者

投資家
小型株や成長株への投資が多く、市場が下落した局面で買い越し、上昇した局面で売り越すの傾向があります。
取引金額ベースでは、海外からの市場参加者が国内の3倍超で、投資家から集めた資金を一つにまとめて、プロが運用するファンドもココに含みます。

国内金融機関
銀行、保険、信託銀行など
生命保険・損害保険の保険料や顧客から預かった資産を信託形式で運用・管理します。

証券会社
マーケットメイキング(約定率向上)、ディーラー業務、自己勘定取引など

公的資産運用
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や政府系ファンドによる国家資産や年金資産の運用を行う。
基本的に長期保有で売買頻度は低いです。

公的介入
日銀による市場安定・景気刺激・金融政策を目的とした公開市場操作。
2025年7月時点で、リーマンショック下で買い入れた保有株は全売却済み。37兆円のETF(上場投資信託)は、まだ残っている。

事業法人
上場企業による株主還元・株価対策・資本効率(ROE)向上・持ち合い株・M&Aを目的とした市場参加。
数千億円規模で行うのは、トヨタ、ソフトバンク、NTT、KDDI、MUFG、SMFGなど

HFT専業者
ミリ秒単位で売買を行うHFT取引だけを専門で行う業者。

集計元
東証 「取引参加者別売買動向」
金融庁「資本市場サーベイ」
日本銀行 「資金循環統計」
JPX「売買参加者別売買動向」

アルゴリズム取引の概要

参加者を横断し、手段として用いられているのが、アルゴリズム取引による自動売買です。
市場における取引の大半を占め、特に、先物やオプション市場では使用率が高くなります。

統計や数式を駆使して、厳格なVARモデル(Value at Risk)をベースに構築し、バックテストを重ねた戦略を自動で実行します。

主な種類

HFT型
高頻度取引・高速取引。
わずかな価格変動から利益を得るため、スピードが要になってくる方法です。

マーケットメイキング
売りと買いの両注文を市場に出し、マーケットメイキングを行うことで、 スプレッドの利益を得る。
1日当たり数百万単位の注文を発行する。

マーケットメイキングのデモンストレーション
スタートボタンを押すと、ランダムな数字が設定され、3回分の取引が表示されます。
現在価格に対して、買値(bid)と売値(ask)を設定し、発注者が出現。売買が完了すると、スプレッドを獲得してマーケットメイカーに利益が加算されます。
(アドブロックなどを使用されていると正常に動かない場合があります)

レイテンシー・アービトラージ
異なる取引所間の価格差を数ミリ秒単位で狙う。

統計的アービトラージ
数千単位の連動銘柄(ペアトレード)を同時スキャンし、片方が急騰し価格が乖離したタイミングで、売買ポジションを構築し、戻ったタイミングで利益確定する。

オーダーブック・パターン分析
板データ取得し、AI等で次の価格変動を予測しエントリー

ニュース・センチメント
NLP(自然言語処理)でニュース、SNS、をリアルタイムに解析し、株価の動きを予測し、急変動を先取りする。

フラッシュ・イベント取引
M&A発表時の対象銘柄の自動取得他、決算や雇用統計などの経済指標発表に数ミリ秒以内に反応する。
新聞社等と個別契約することで公開前の情報に事前アクセス

ダークプール探索
取引が見えないダークプールの動向を特定の価格変動や板の反応から検出し、可視化を試みる

その他のアルゴリズム取引
HFTに対して、LFT(低頻度アルゴリズム取引)とも言われます。
HFTと比較すると多様な時間軸や市場の歪みを対象とし、中長期的な視点や戦略的ロジックが重要になります。

最適執行型

VWAP
平均的な出来高加重平均価格に近づけるように注文を分割。

TWAP
取引時間を等間隔に分割し、それぞれの時間帯で均等な量の注文を執行。

POV
市場の流動性に合わせて注文量の割合を一定に調整することで、価格への影響を抑える。

IS
大口取引を行う場合に、市場への影響を最小限に抑え、希望通りの価格で約定させる。
最適化計算に基づく注文分割、価格誘導、市場分析による執行タイミングの特定で成り立つ。

マーケットウオッチ型
FIXプロトコルやAPIを用い、リアルタイムの市場の動向を取得し、分析する。

モメンタム
過去の価格変動を移動平均線や相対力指数で分析したアルゴリズムで、トレンドの始まりや終わりを見極め、売買シグナルを生成する。

スナイパー
流動性の検知や価格の高騰など、前もって指定した条件が満たされたときに、注文を自動で執行する。

ミーンリバージョン
短期的に価格が乖離しても、いずれ平均に回帰するという理論に基づく。
銘柄の平均価格と売買ポイントを見定め、価格が上昇した場合は売り、下落した場合は買い、を繰り返す。

トレンドフォロー
過去の価格データから上昇トレンドと下降トレンドを識別し、そのトレンドが継続すると予測される方向に取引を行う。
トレンド転換期の算出方法として、移動平均線やMACDなどの指標が用いられる。

ベーシック戦略
財務データや経済指標を定量化して自動の売買注文を行う。

資産管理型
設定値から比率が崩れた際に売買を実行し、資産配分を自動的に維持する。

ポートフォリオ最適化
リスク予測を自動が行い、状況に応じて資産のウエイトを調整

等々、様々な手法があります。
自動で収益機会を探索し、最適執行を行う、良く出来たアルゴリズム取引は、寝ていてもお金が貯まる打ち出の小槌のような存在です。
例えば、証券システムの構築案件に参画し、ノウハウを学んだSEが自前でトレーディングシステムを構築し、副業の末に、起業した事例もあります。

閑話休題
この手のプロジェクトは企業から参加メンバーへ誓約書への署名を求められたりもしますが、インサイダー情報ならともかく、個人が業務で得た経験に対する損害は立証しようが無いと思うのです。

アルゴリズム取引には勝てないのか?

手動で売買を行う個人の投資家が、損切り遅れや利確早期化などの心理的な要因で投資判断を間違うように、アルゴリズム取引にも弱点があります。

株価の急落急騰への対応
あるアルゴリズムが特定の指標に反応して売買を開始すると、 それに追随するように他のアルゴリズムも同じ方向に動き出し、連鎖的に株価の変動が加速します。

市場の流動性の低下
急激な変動や予期せぬイベントが発生した場合、 アルゴリズムがリスク回避のために一斉に注文を取り消したり、取引を停止する。

また、プログラムをベースとした自動売買は、挙動が察知されやすいというデメリットがあります。
OFI等の買い注文と売り注文の不均衡からHFTの活動パターンを分析する手法を用い、先読みして、仕掛けるといった、アルゴリズム取引を狙って狩るアルゴリズム取引もマーケットを徘徊しています。

混沌とした市場では、「安い時に買って、高い時に売る」のようなシンプルさが意外に正解かもしれません。